

『8mmフィルム』とは?
1970年ごろ一般家庭で流行した映像メディア(現在は一部を除き日本では製造中止されている)で、1コマ、横5.69mm×縦4.14mm、対角線の長さが8mmという非常に小さいポジフィルムの連続写真により、映写機によってスクリーンに何千倍の拡大率で映し出されるもので、現代のデジタル社会に背を向けた完全なるアナログ的メディアである。
そんな8mmフィルムの表現の可能性を『実験映画』というカタチで28年間、追い続けているので皆様に少しでもその魅力について(株)DGコミュニケーションズ クリエイティブスタジオの鈴木がご紹介していきます。
えっ?いいじゃない、1コマ1コマにこだわったって
8mmフィルムは形ある『モノ』です。見て、触って、そして自分の手でフィルムに直接加工する事ができます。だから、フィルムの1コマ1コマを切ったり、穴をあけたり、削ったり、塗ったり等々、様々な手法を用いて映像作品を作る事が可能なのです。
過去に、フィルムってこんなことが出来るんだと言う可能性や面白さを少しでも伝えていくことをプレゼン形式で見てもらうというコンセプトで、アンダーグラウンドな実験映像ワークショップを10年以上にわたり展開したりしていました。
〈制作風景〉

ジャンルの壁を乗り越えて
表現を築き上げるために、こだわるべきは、その意気込みや手法、そして想う力だと感じます。それは、良いか悪いかとか、○か×などではなく、生き方そのものをどこまで突き詰めるか、なんです。
世の中には分野と言う捉え方があり、分野を頼りに作ったり受け取ったりします。楽だからです。音楽ならパンクとかクラッシックとか歌謡曲とか様々ありますし、広告業界でもチラシ、立て看板、イベント等さまざまあります。映像世界も当然様々な分野で語られます。
でも根底にあるのは、どんな音楽だって音楽だし、どんな映像だって映像です。ひとつを徹底して突き詰めれば、“何でも同じ”と言う自由で豊かな発想ができてきます。極論を言えば、カメラが無くても、撮影しなくても、お金が無くったって、そこに8mmフィルムと想像力があれば映画は作れます。
フィルムの長さ、時間の壁
実験フィルムで構成された映像の作品化は、表現を伝えるべき『作品の尺』が最大の壁になってきました。削ったり、塗ったり、穴をあけたりする行為そのものはどちらかと言えば工芸や彫刻に近い感覚で実際制作中は映像を作っている感覚は、ほとんどありません。だからこそ、1コマに集中して加工する事をより多く持続させ18コマで一秒というリズムと想像力が作品化には必要になりました。
時間の長さを意識したときに手元で触れている1コマの先の18コマの動きを意識しながら作業する様になりました。アニメーション的な方法に近いと思います。そうやって構築した数10コマが1カットとなります。基本的にはフィルムに触りながら作品の全体像を考えています。
イメージフォーラム・フェスティバル ニューフィルム・ジャパン(日本招待部門)にて上映
IFF2012『20:Twenty』/IFF2013、EXPERIMENTAL FILM FORUM(シンガポール)『Mark』/IFF2014『Shadow of the bleaching』


葉っぱ一枚にこだわることによって、森の形が変わり、森の形を意識することによって、葉っぱ一枚の形を変えていく、それが私にとっての映像の作品としての関わり方です。そしてこれからも続けていくと思いますが、私が自身をさらけ出して作品を作る行為そのものが目的なのか発表する事が目的なのかは、タイミングと気分次第で変わるでしょうが、フィルムを触っていると生きている実感がします。
次回は、8mmとの出会い、影響を受けた作品をご紹介します。
鈴木